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東京大学 大学院医学系研究科 公共健康医学専攻
医療科学講座 臨床情報工学分野

(English)


沿革と組織の概要

情報工学とは、客観的な形で存在する情報を対象とし、その伝達、記憶、処理、入出力などに関する方法を考案し、その装置やシステムを構築する技術を作ることに重点が置かれ、国内では情報科学とほぼ同義に使われている。医学への計算機(コンピュータ)の応用の歴史を紐解くと、1950年代に科学者や技術者の計算を支援する装置として登場し、1960年代には統計や会計処理などの計算に用いられている。1980年代になるとパーソナルコンピュータが登場し,コンピュータが個人の一般的な知的作業に利用される一方、大学病院などの大規模病院基幹部門の業務の情報システム化が急速に行われた。

Information Engineering(情報工学)という言葉は、1981年Martin J. とFinkelstein C.により最初に提唱され、組織での情報処理技術を効率的かつ効果的に行うための計画、分析、設計、実装などから構成される一連の情報システム化の方法論とされている。1990年代に入ると,表現,設計,科学的発見などのヒトの思考への支援ツールとして利用されている。同時に、組織の中の情報流通のみならず組織間や社会全体での情報流通がインターネットを介して国際的にも容易となり、高度情報化社会や第四次産業革命とまで称されるまでになる。医学分野も同様で、国内の大学の中に情報学関連の講座が登場し始める。

特に21世紀に入り、ヒトゲノム情報の解読に代表されるバイオインフォマティクスの登場や病院業務支援や地域医療連携をはじめとした多くの医療分野の情報化のみならず,診療ガイドラインの電子化や知識処理技術を駆使した診療ナビゲーション機能の実用化など医学・医療分野における知識マネジメントへの応用も始まり、医学及びその関連分野における情報処理はコンピュータ無くしては成り立たなくなってきている。つまり、医学研究、診療、保健など医学・医療のどの分野をとってもその発展には情報工学への基本的理解が必須不可欠のものとなっている。

このような時代背景の中、臨床情報工学(Clinical Information Engineering)教室は、平成14年度から始まった文部科学省科学技術振興調整費新興分野人材養成プログラムの一つであるクリニカルバイオインフォマティクス研究ユニットの中の臨床情報工学部門を前身として、平成19年4月国内で初めて公共健康医学専攻医療科学講座の中の一分野として設置され、現在に至っている。


教 育

最先端の情報工学技術の医学分野への応用に関する医学と工学双方の知識と技術を有する国際レベルの人材の育成を行うことを目指している。そのため、医学・医療・保健分野の臨床における情報工学技術の設計・開発・評価と情報化プロジェクトマネジメントに関する教育を担当している。本務を当教室に置く教育スタッフは教授1名、助教1名。京都大学や国立がん研究センタ-等から世界的に著名な非常勤講師及び客員研究員を招聘し、重責を果たせるよう努めている。

(1)       大学院医学系研究科

公共健康医学専攻では、公共保健・医療分野への情報工学技術の応用(Public Health Informatics)に関する講義と実習を担当し、情報工学技術を応用したに関する実践的知識と技術の習得を目標としている。

また、社会医学専攻医療情報経済学分野を兼担し、医学博士課程(4年制)を受け持ち、データマイニングやVirtual Reality技術の応用と評価法の修得を目標とした大学院セミナーや研究発表会を実施している。医科学修士専攻の学生も受け入れており、当教室では医学博士、公衆衛生学修士の学位取得が可能である。

(2)       医学部医学科

社会医学専攻医療情報経済学分野の兼担により医学部医学科の講義も一部担当している。


研 究

医学への情報工学の応用について社会的価値が高く、国際レベルの研究開発を目指し、以下の四項目を中心に進めている。

(1)Medical Decision Making:

初期診療ガイドラインの電子的利活用を行う上で必要な医学知識構造化とその応用に関する研究を行っている。

(2)Data Mining & Knowledge Discovery from Databases:

インターネット上に公開されている複数の医学系データベースを仮想的に統合する仮想統合化技術と多様な情報要求に応じた情報処理技術に関する研究開発を行っている。

(3)       Biomedical Computer Graphics & Virtual reality:

脳神経外科学教室と共同で本モデルを用いた3D Interactive Visualization手法による手術前診断精度の向上や手術への有用性, 術者の熟達度の評価に関する研究開発を行っている。

(4)       Public Health Informatics (PHI):

Public Health Informaticsの現状について国内の情報化の現状とその課題について調査分析し、欧米との国際比較研究を行っている。